気候変動
当社グループは、持続可能な社会を目指すうえで、地球環境保全に向けた気候変動問題の解決は国際的な重要課題であると認識しています。「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える」「世界の温室効果ガス(GHG)排出量をピークアウトさせ、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとる」の2つを世界共通の長期目標とした2015年のパリ協定を批准した日本政府も「2030年 GHG排出量 2013年比46%削減」「2050年 カーボンニュートラル実現」を宣言しました。脱炭素社会への移行は、持続可能な社会への貢献を目指す当社グループにとっても責任をもって取り組むべき重要な課題であると認識しています。
ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関するガバナンス体制について、代表取締役社長を議長とする取締役会において、気候変動に伴うリスクと機会の管理および評価を含めたサステナビリティ課題の管理・監督を行うこととしております。なお、2024年9月に取締役副社長を委員長とし、事業本部および管理本部から委員を選出して、サステナブル委員会を立ち上げました。今後、当委員会においては、サステナビリティ関連の各種情報を収集し、施策の立案・展開・進捗管理を行うとともに、リスク管理の強化および機会を効果的に活用するための統制活動を推進してまいります。
戦略
当社グループでは、気候変動による平均気温の上昇と、それに伴う社会情勢の変化や災害リスクを重要視し、対策を進めることとしています。その一環として、気候変動がもたらす短期・中期・長期それぞれの「リスク」と「機会」を特定し、シナリオ分析を実施しています。シナリオとしては、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つを参照しました。これは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル, Intergovernmental Panel on Climate Change)第6次報告書やCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)でみられるように、産業革命期からの地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑える水準で取り組みが国際的に求められている点を考慮しています。今回、政府や国際機関が発行した将来予測に関するレポートを参考に、気候変動がもたらす移行リスク(政策・法規制、市場、評判)、物理リスク(急性、慢性)、ならびに気候変動への適切な対応による機会(製品及びサービス、市場、レジリエンス)について、網羅的な検討を行いました。
シナリオの前提
リスク種類 |
設定シナリオ |
参照シナリオ |
概要 |
---|---|---|---|
移行リスク |
1.5℃シナリオ |
国際エネルギー機関(IEA), |
21世紀までの平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるシナリオ。持続可能な発展を実現するため、大胆な政策や技術革新が起こり、その分脱炭素社会への移行にともなう社会変化が事業に影響を及ぼす可能性が高くなる。 |
物理的リスク |
4℃シナリオ |
気候変動に関する政府間パネル(IPCC),「IPCC第6次評価報告書(AR6)SSP5-8シナリオ」 |
21世紀までの平均気温の上昇が4℃程度上昇する。成り行き任せに近く、社会の変化は起こらないが、気候変動に伴う異常気象や災害が事業に影響を及ぼす可能性が高くなる。 |
シナリオ分析の対象範囲
項目 |
シナリオ分析対象範囲 |
---|---|
地域 |
日本国内 |
対象事業範囲 |
全事業 |
企業範囲 |
連結対象 |
時間軸の定義 |
短期:2025年頃まで、中期:2030年頃まで、長期:2050年頃まで |
シナリオ分析結果
リスク
区分 |
リスク項目 |
時間軸 |
影響 |
---|---|---|---|
政策・法規制 |
炭素税の導入 |
中期 |
Scope1,2の排出に対し、炭素税負担が求められることによる伴うコストが増加するリスク |
設備投資の増加 |
中期 |
GHG排出量削減に伴い、自社設備/オフィスにおける省エネ対応のための設備投資コストが増加するリスク |
|
技術 |
企業イメージ |
中期 |
サービスの開発・提供の推進を含む、脱炭素に関する技術開発不足と判断された場合の企業ブランドイメージが毀損するリスク |
市場 |
再エネ料金 |
中期 |
オフィス・データセンターにおける再エネ化に伴う電気料金の負担が増加するリスク |
取引先からの選定 |
中期 |
気候変動対応の遅れにより、大手の取引先企業が競合他社に移行してしまうリスク |
|
EV対応需要の増加 |
中期 |
CO2削減のためのEVの普及にともない、対応するソフトウェア技術の習得が遅れることによってシェアが低下するリスク |
|
評判 |
ステークホルダー |
中期 |
気候変動対応が不十分の場合、顧客、投資家、金融機関、従業員といった各ステークホルダーからの評価が低下し、人材採用コストや資金調達コストが増加するリスク |
急性物理的 |
サプライチェーンの寸断 |
中・長期 |
サプライチェーンの寸断により、子会社が取り扱う事務機器が納品できなくなるリスク |
洪水・台風の被害 |
中・長期 |
サービス提供に関わる事務機器在庫等のハードウェアへの物理的損害による損失リスク |
|
交通機関の麻痺 |
中・長期 |
エネルギー供給停止や交通機関のマヒによって客先に人材が移動できないことによる業務停止リスク |
|
慢性物理的 |
空調料金の増加 |
中・長期 |
オフィスやデータセンターの冷房設備の稼働が高まり、電気料金の負担が増加するリスク |
感染症の蔓延 |
中・長期 |
感染症の蔓延により稼働人材が減少することによる売上減少のリスク |
機会
区分 |
機会項目 |
時間軸 |
影響 |
---|---|---|---|
リソースの効率化 |
エネルギーの |
中・長期 |
GHG排出削減やエネルギーの効率的利用に向けたICT活用によるサービスの需要増 |
製品および |
クラウド志向の |
中・長期 |
クラウド志向が進むことによるクラウドの需要増 |
市場 |
リモートワークの増加 |
中・長期 |
気温上昇にともなう在宅勤務・ワーケーション普及等、顧客企業の就業環境の変化によって、セキュリティ製品の需要が増加する |
BCP対策・DX化の進展 |
中・長期 |
企業のBCP対策・DX化の進展に合わせたシステム需要が増加する |
|
ステークホルダーからの評判 |
中・長期 |
環境対応に積極的な姿勢を示すことで、主要取引先やエンドユーザーからの信頼が強化される |
|
レジリエンス |
EV対応需要の増加 |
中・長期 |
CO2削減のためのEVの普及にともない、対応するソフトウェア技術を活用した販売機会が増加する |
リスク管理
当社グループでは、事業継続リスクを含めた事業を取り巻くさまざまなリスク及び機会に対して管理を行うこととしております。この取組みの的確な実践を可能とすることを目的にリスク管理規定を定めており、同規定に基づいて設置したリスク管理委員会を通じて全社的・総合的なリスク管理を推進・実施しております。リスク管理委員会は、経営企画部門担当取締役が委員長となり、各事業部門の責任者を委員とするメンバーで構成されており、定期開催に加えて、重要なリスクについては必要に応じて追加開催し、リスク事象の確認・評価・対応方針の決定等を行っています。さらに、2024年9月にはサステナブル委員会を新たに立ち上げ、気候変動などのサステナビリティ関連リスクに関する議論を行い、その内容をリスク管理委員会と共有する体制を整えました。
主な取り組み
温室効果ガス(GHG)排出量の把握
本社オフィスの電気使用量から二酸化炭素排出量を算定しています。今後も継続して把握しつつ、削減に向けた取り組みを検討していきます。
2023/6月期 |
2024/6月期 |
|
---|---|---|
電気使用量 |
234,563kWh |
339,418kWh |
排出係数 |
0.000434 |
0.000457 |
CO2排出量 |
101.80t-CO2 |
155.11t-CO2 |
- ※1. 排出係数は、電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)を参考にしています。
- ※2. 前期からの排出量の増加は、本社オフィスの増床に伴い、4階を新たに賃借したことが主な要因です。
ペーパーレス化の推進
主にバックオフィス部門にて不要なもの、データ化ができるものを識別し、可能な限りペーパーレス化を図っています。また、電子契約アウトソーシングサービス「DD-CONNECT」をはじめとした当社製品の使用は、当社グループ及び導入先のペーパーレス促進にも寄与しています。
テナントとしてのビル管理会社とのエンゲージメント
当社では、テナントとして入居するオフィスの電力利用状況についても電力使用量及び温室効果ガス排出に関する意識を有することが重要であると考え、ビル管理会社に温室効果ガス排出量の削減目標および施策などをヒアリングし、以下のような回答を得ています。
削減目標 |
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---|---|
取り組み |
<ビルオーナーとしての取り組み>
<入居者への働きかけ>
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再生エネルギーの |
現在、再生可能エネルギーは使用していない。 |
その他
オフィスにおける適切な室温管理、節電(スペース不使用時の消灯など)を周知徹底しています。